美しさに犠牲はいらない。LUSHの信念から「責任ある消費」を考える

色彩豊かなバスボムや、自然素材を使用した化粧品が人気のスキンケアブランド・LUSH。見ているだけでワクワクする可愛らしい製品やお洒落なパッケージでお馴染みだ。

ハッピー&ヘルシーライフを追求し、化粧品業界に新たな風を吹かせるパイオニアとして挑戦を続けるこのブランドには、明確な信念と志がある。

LUSHの歴史

1995年、イギリス・ドーセットに1号店をオープン。

1998年には株式会社ラッシュジャパンを設立。翌年、自由が丘に日本1号店をオープンした。

2007年、売り上げの全額(消費税は除く)が寄付されるボディクリーム「チャリティポット」を販売開始。動物・人・環境に関する課題の根本的な解決を目指し、そうした問題に取り組む団体のサポートを行っている。

2009年7月には、ラッシュジャパン初となる『化粧品のための動物実験反対キャンペーン』を実施した。

2018年3月、第2回グリーン・オーシャン大賞*受賞。原発事故による風評被害を受ける福島県南相馬市の菜種油をソープの原材料として使用することで、農地や現地の再生に繋げる取り組みが評価された。

※1 SDGsが規定する「アウトサイド・イン」(社会課題を起点にしたビジネス創出)の優秀事例を表彰する

 

LUSHの信念

A LUSH LIFE

ラッシュの信念

私たちは、フレッシュでオーガニックなフルーツや野菜、高品質のエッセンシャルオイル、

そして安全性の確認された合成物質から効果的な商品を作ることを信じています。

私たちは、動物実験をしていないことを確認できた会社からのみ、

原材料や資材を買い付け、

またその安全性は人間の肌の上で確認することが重要であると信じています。

私たちは、自社で商品と香りを開発しています。

私たちは、フレッシュにこだわり、ハンドメイドで製造します。

合成保存料やパッケージは、可能な限り使用せず、

使用する場合も最小限にとどめます。

原材料は全てベジタリアン対応のもののみを使い、

商品そのものに製造年月日を明記しています。

私たちは、ハッピーな人がハッピーなソープを作ることを信じています。

そして、私たちの商品に記された作り手の顔が、

お母さんを誇らしい気分にさせると信じています。

私たちは、キャンドルを灯しながらお風呂でくつろぎ、

シャワーを誰かと一緒に浴びたり、

マッサージをしたり、心地よい香りで世界をいっぱいにすることと同時に、

たとえ失敗して全てを失ったとしても、再びやり直す権利があると信じています。

私たちは、商品が価値あるものであると信じています。

そして適正な利益を得ること、

常にお客様の価値観を尊重することを大切にしています。

私たちは、誰もが世界を自由に行き来し、

その自由を楽しむべきであると信じています。

私たちはまた、fresh/フレッシュ、organic/オーガニックという言葉が、

単なるマーケティングの領域を超えて、実際に「新鮮」であり、

「有機」であるという本来の言葉のもつ意味を信じています。

LUSH公式サイトより

 

NO!動物実験

LUSHは「NO!動物実験」というスローガンを掲げ、創立当初から化粧品のための動物実験に反対している。

ヨーロッパでは、1980~90年代に、化粧品のための動物実験に反対する動きが広がったという。このムーブメントの結果、2013年にはEU域内では動物実験を行って開発された化粧品の販売が全面的に禁止となった。

化粧品開発は動物実験を行う正当な理由にはならない、という市民の信念を反映したものであり、今後は安全性を証明するための代替法に対する開発支援を行っていくとした。

 

 

しかし、化粧品のための動物実験を規制する法律のない日本では、まだまだ動物実験廃止に対する関心は高くない。実際に、「NO!動物実験」の文字とウサギのイラストが印刷されたLUSHのショッピングバッグには、ネット上でもマイナスな反応が見受けられた。
そんな現状と、LUSHは闘い続ける。

『美しさに犠牲はいらない』

これが、LUSHの発信するメッセージだ。
人・動物・自然環境がハッピーに共存できる持続的な社会をつくることを目指し、顧客と一体となって社会に対するアクションを起こしている。

「つながるオモイ」プロジェクト


LUSHは使用する原材料や資材の調達を通じて、社会にプラスの影響を与えることを目指している。そうした活動を通じて生まれたのが、福島県南相馬市で生産された菜種油を原料としたソープ「つながるオモイ」だという。

 

 

2011年に起きた福島第一原発事故により、南相馬市の農業は大きなダメージを受けた。環境汚染と風評被害により、それまで自然と対話しながら農業を続けてきた人々の生活は一変してしまったのだ。

そんな状況を変えるべく、「菜の花プロジェクト」が動き出した。これは、除染効果を持つ菜の花を農地で栽培し、収穫した種子から搾った菜種油を商品化しようというもの。また、搾りかすからバイオガスをつくり、エネルギーとして再利用することもできる。(菜の花には土壌の放射性物質を吸収する力があることと、それらの種から搾った菜種油には放射性物質が移行しないことは、チェルノブイリ原発事故後の農地再生の中で実証されていた。)

LUSHはこのプロジェクトによって作られた菜種油をソープの原料として使用し、地域社会の再生につながる持続的な購買活動を行うことで、南相馬市や福島の復興に貢献している。

エシカルバイイングポリシー


LUSHのバイイング(調達)チームは、「
商品の原材料は、環境と社会に対する影響を配慮し、倫理的な方法で購入するべきである」という理念を掲げ、常により良い原材料と最適な調達方法を探しているという。フェアトレードやコミュニティトレードを積極的に支援しているほか、自分たちの調達活動が「誰に、どのような影響を及ぼすのか」をしっかりと考える。自らの足で世界中を巡り、原材料がどのように生産されているのかを実際に見て確かめる。そうすることで、社会に対して責任ある行動を取ることができるのだ。

#パッケージなんていらない


LUSHといえば、固形のソープやバスボムが多く売られている印象を持つ人もいるだろう。彼らが固形の商品を開発する理由は、ただ「持ち運びに便利だから」というだけではないのだ。固形にすることで容器を削減することができ、環境への負担を減らすことができる。

プラスチックを使った容器は、廃棄にも多額のコストと大量の資源を必要とする。生産する企業にとっても、環境にとっても、非常に無駄が多いのだ。そこでLUSHでは、パッケージのない「ネイキッド商品」の開発に取り組んできたという。

 

 

これは、私たち消費者にとっても価値ある取り組みだと言える。それまでパッケージにかけていたコストを原材料や製品の質の向上にあてることができ、同じ値段でよりハイクオリティな商品を作ることができるからだ。

またLUSHでは、限りある資源を有効活用するべく、空容器の回収も行っている。ショップに空の容器を5個持っていくと、「フレッシュフェイスマスク」1個と交換してくれるというものだ。誰にでも取り組みやすい仕組みを作ることで、社会に対しての働きかけも行うのがLUSHの姿勢なのだ。

独自のフェアトレード


フェアトレードとは、開発途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することにより、立場の弱い開発途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指す貿易のしくみを指す。

生産者がフェアトレード認証を取得するためには、定められた基準を満たす必要がある。しかし、LUSHが調達している原材料の中には、フェアトレードの対象地域でない国で生産されたものや、少量生産のためフェアトレードの基準に当てはまらないものもある。

 

そこでLUSHでは、生産者と密接なコミュニケーションを取ることでその生産過程や品質について正しく理解し、独自のプロセスでフェアなトレードを実現している。中には何らかの事情があってフェアトレード認証を受けられない生産者もいるが、そうした場合でも自分たちの目できちんと確かめることで信頼関係を築いているのだ。

 

責任を持ってモノを選ぶ姿勢

日本には、安い化粧品や衣料品、日用品が溢れている。それらはとても便利で、間違いなく私たちの生活を豊かにしてくれるし、きっとその裏には様々な試行錯誤があるのだろう。

しかし、そうではない場合もある。日本で安く売られている製品が、実は劣悪な労働環境のもとで作られていたり、残酷で不必要な動物実験を経ていたり、児童労働の機会になっていたりすることもある。

だからこそ私たちは、自らが使うモノに対して責任を持ち、意思を持って選択するべきなのだ。LUSHの確固たる信念とモノづくりに対する姿勢は、私たちに大切なことを教えてくれる。