旅の一枚の写真と、それにまつわる唯一無二のストーリー。そんな自分だけの(=own)旅の記録(=graphy)を集めたギャラリー「Owngraphy」。
ロンドンは小さな頃から憧れの地で、ずっと訪れたい街だった。
私にとって特別な意味のあるロンドンで、素晴らしい新年を迎えることが叶ったのは、人生の節目となる20歳がもうすぐ終わろうとする時であった。
前年はニューヨーク・タイムズスクエアで新しい年を迎えた。そこで出会って意気投合した、ロンドン在住のイラン人シャーヤンに「『LONDON New Year’s Eve Fireworks』と呼ばれるロンドンでの年越しは、タイムズスクエアよりも遥かに良いよ』と教えてもらった。私はその場で、翌年にロンドンで最高の新年を迎えることと、彼と再会することを決めた。
この写真はそれが叶った瞬間を捉えた一枚だ。
言うまでもなくタイムズスクエアでの年越しも、本当に素晴らしかった。しかしながら、朝から並ぶうえに飲食はできず、トイレにすら行けない状況は、一人で旅をする私にとって少しばかり厳しいものであった。素晴らしいことに間違いはないが、なかなか過酷な大晦日だったのだ。
それに対してロンドンは、夜19時頃からしか入場ゲートに並ぶことは出来ないし、観覧エリア内に屋台もトイレもある。私はそれだけで「最高のニューイヤーズイブを過ごしてほしい」という英国人の優しさにほっこりさせられたのだ。
近代ロンドンの象徴・ロンドンアイの前に打ち上がる幾千の花火は壮麗の一言に尽きる。エド・シーランやアン・マリー、デュア・リパといった現代のポップアーティストから往年の名バンド・ビートルズまで、UKアーティストのヒット曲に合わせて花火が上がるその光景に心を奪われた。会場にいる人たちは思いやりと優しさに満ちていて、花火の終わりとともに皆で「All You need is Love」を合唱した経験は一生の宝物。これほどまでに穏やかで、優しい気持ちになれる瞬間はそう多くはない。
ヨーロッパで一番大きな観覧車であるロンドンアイの大きさを考えると、花火がどれほどの規模で打ち上がっているのかが分かるはず。まさに自分の視界には、夜空一面に打ち上がる花火しか映らない。この写真は、そんな瞬間を捉えることができた一枚だ。
「必ずロンドンに戻ってくる。」
そう心に決めたのは、この花火を見終わった時だっただろうか。伝統あるロンドンという街は、これからも私にとって大切なものであり続けるだろう。そして、少しづつ淡くなっていくその街の記憶の中でも、きっとこの一瞬だけはいつまでも鮮明に心の中に持ち続けているのだろう。